山木和人氏。カメラ業界で好漢と評判の人物
山木和人氏。カメラ業界で好漢と評判の人物
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米カリフォルニア州アナハイムで開催されているカメラ関連の展示会「PMA 2010」の会場で,シグマ 取締役 社長の山木和人氏に米Foveon, Inc.のCMOSセンサなどに関して話を聞いた。シグマの米国法人は,2008年にFoven社を買収している。Foveon社は独自の3層構造のCMOSセンサの技術を持つ。撮像素子技術者の多くは同社のCMOSセンサについて,光の利用効率が高く色の変化を細やかに記録できると評価している(Tech-On!関連記事1dpreview.comによるDP2の作例)。

――シグマは今回,レンズ一体機「DP1x」と「DP2s」の2機種と,一眼レフ機「SD15」を発表しました。しかし,いずれも以前のモデルと同じCMOSセンサを採用しています注1)。Foveon社がCMOSセンサの新しい品種を開発できているのかが,気になります。

注1)撮像部寸法はAPS-Cとフォーサーズの中間に当たる3/2型(対角長24.9mm),画素ピッチは7.7μm前後,総画素数は482万(通常の撮像素子換算で1445万画素)。

 我々は,新しいCMOSセンサを開発中です。具体的には明かせませんが,現行機種が採用しているような大型品です。製造委託先である韓国Dongbu Hitek社とは週に1度は協議しています。我々はこれまで以上の画質を,量産品として安定的に実現できるよう努めています。

 三層構造のCMOSセンサを量産出荷している企業は我々の他にありません。我々だけが三層構造に伴う技術課題を解決するのは大変ですが,それでもやり遂げたいと思わせる魅力がこのセンサにはあります。実際,Foveon社のメンバーは当社による買収後も,ほとんど会社を辞めていません。

――ソニーの「クリアビッドCMOSセンサー」を用いたカメラ・システムのように,撮像素子後段の画像処理LSIを積極的に使い,R(赤色)寄りとB(青色)寄りの光の情報を演算で求めて記録するシステムもあります(Tech-On!関連記事2)。

 他社の考えを否定するつもりは全くありませんが,光を良く知る我々は,演算ではなく光を直接,無駄なく電子化するFoveon社のセンサに魅力を感じています。

――光電変換で取得できなかった光の情報は,演算で後から作り出せない。作れるのは類似の情報というわけですね。質問を変えます。Foveonセンサを外販したり,関連特許の実施権を撮像素子メーカーに与えたりする計画はお持ちですか。

 考えられる外販先は,学術・科学技術用途でしょうか。協業する利点がハッキリ見えるなら民生用途もあり得るかもしれません。現段階では,三層構造に関するライセンスを求めてきた撮像素子メーカーは特にありません。

――最後に,今回発表したカメラも,富士通マイクロエレクトロニクスが製造した画像処理LSIを採用したのですか。

 そうです。LSIのハードウエア部分は「DP2」が既に採用していたものです。それを「DP1x」「DP2s」「SD15」に適用し,新開発のファームウエアとそれぞれ組み合わせました。

◆PMA 2010リンク集